砂漠のウサギ小屋作戦
ビデオ『ザ・ベスト・オブ・砂漠のウサギ小屋作戦』ダイジェスト版
FIU・JAPAN
ザ・ベスト・オブ・砂漠のウサギ小屋作戦
この作品は、ボイスの言う「拡大された芸術概念」を、私たちFIU・JAPANが実現化したものである。
構成要素としてビデオと会場での対話によって成り立っている。
ビデオの内容は、1991年3月10日、東京・渋谷に於いて行われた街頭デモンストレーション、及びティーチイン(3月23日・早稲田奉仕園)の記録映像に加えて、湾岸戦争をめぐる様々な映像を編集・構成したものである。
私たちはこの街頭デモンストレーションを 『砂漠のウサギ小屋作戦』と名付け、以下のメッセージを込めてアクションを行った。
①湾岸戦争に反対する。
②湾岸戦争で行われたメディア操作に抗議する。
③湾岸戦争に対する日本政府の対応に反対の意志を表明する。
(アクションは湾岸戦争をめぐる映像を映したTVを背中に背負って歩くなど、街を歩く人々がそれを見て、湾岸戦争時に対するイメージ表出や批評意識が喚起されるような形で工夫され行われた)
このビデオは、湾岸戦争後、単一的な情報だけを流すメディアに抗議して起こった世界各地の様々なムーブメント(例えばオルタナティブ・メデイアが生んだ湾岸戦争に対する作品を自分たち独自のネットーワークを使って流通させる試み等…)に呼応する形で、多くの人々の手によって流通された作品である。
上記のように、このビデオは戦争反対の行動をただ記録するために制作されたものではない。独自の流通・上映方法を使い見られることによって、戦争をめぐる自分たちのアクションが生まれることを主要目的に制作されたものである。
そのことによってヽ「ボイスを考える部屋」で上映される場合も自分たちのアクションが生まれるような形で行おうと私たちは考えている。
具体的にいえば、ビデオ『ザ・ベスト・オブ・砂漠のウサギ小屋作戦』が上映されるモニターの前で「湾岸戦争及びメディア問題をめぐるディスカッション」を行うつもりである。
以上のビデオと、当日の対話によって成り立った作品を、私たちFIU・JAPANは提出する。
最後に、戦争反対の行動と芸術はいかに結びつくのか? ということを語っておきたい。
私たちはこう考える。
芸術とは、人間と人間との関係=コミュニケーションの多様性の上に成り立っているものである。そして戦争とは、関係する他者を殺す=物体化させることによってコミュニュケーションを一元化するものなのである。
つまり戦争は芸術とはまったく反対の性質を有するものであり、芸術を破壊するものなのだ。
とするなら、あらゆる芸術は戦争反対の行動と常に結びついているはずだと私たちは考える。
ボイスはかつてこう言った。「あらゆる人間は芸術家である」と。
だとするなら、芸術を破壊する戦争に対して、あらゆる人々は抗議する立場にあるはずなのだ。
ボイスと私だちとの対話によって生まれたこのラディカルな論理を「ボイスを考える部屋」で私たちは具体的に現そうと思っている。
〔1991年、ワタリウムにて開催された『ヨーゼフ・ボイス展―国境を越えユーラシアへ』の特別企画『ボイス精神と対話する参加展 ボイスを考える部屋』に出品した際のテクストより〕
【補足】オリジナルのビデオでは、冒頭に、湾岸戦争のニュース映像、テレビゲームのプレイ画面、アニメの戦闘シーン、第2次世界大戦の記録映画などを使った3分程度のビデオコラージュが置かれている。また、当時全世帯の70パーセントにまで普及していたホームビデオを利用してビデオをコピーして回覧していく「ビデオ・サーキュレーション」の活動を行っていたが、そのプログラムの一つ、Deep Dish TVの『News World Order』からの引用、またパレスチナのインティファーダのニュース映像が途中に挟み込まれている。エンドロールはムーンライダースの名曲「はい!はい!はい!はい!」。
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