FIU・JAPAN・GAZETTE 1996年11月10日


▽前回のミーティングの報告
前回のミーティングについて書きます。「オン・キャンプ/オフ・ベース」展に出品したFIUの作品については、それに掛けられる費用、労力などを考えれば、まず考えていたようなものができたのではないかということです。ここにその写真を掲載できればよかったのですが、手元にないので、簡単にどういうものだったのかだけ記述しておきます。沖縄の「象のオリ」、「もんじゅ」、新宿西口のダンボール・ハウス、二重橋をモチーフにした縦1.8 メートル、横1.5 メートルほどの立て看板を作り、それぞれに沖縄の民俗衣装を着た女性、放射能防護服の作業員、地下足袋姿の労働者、よれよれのタキシード姿の男性(これは分かりにくかったかもしれませんがマッカーサーと並んで写った昭和天皇の写真から取られています)を描いたものと組み合わせて、顔の部分をくり抜いたものです。材料は写真から拡大したカラーコピー、人物像は加藤さんによる描画、看板は角材、ダンボール板などからできています。見にきた人たちが、ちょうど観光地にあるものと同じように、その穴から顔をのぞかせたところをポラロイドカメラで撮影して、写真を持ち帰ってもらうところまで含めて、ひとつの作品だと考えていましたが、ちょうど臨海副都心にたくさんの観光客が訪れていたタイミングとうまく合っていたのではないかと思います。事前に、展覧会の運営をしていたワーキング・サイトから、沖縄の看板と新宿西口の看板に主催者からクレームが付くかもしれないと聞かされていましたが(新宿西口の看板については労働者への差別になると言う理由で。二重橋前のタキシード姿には文句の付けようがないでしょう)、何か言うとうるさいと思ったのか、結局クレームは付かず。ただ看板の一つに赤いボールペンで「で」(それで、どうしたの?という意味でしょうか)と書いた小さな紙を張られたり、写真を撮っていると監視員からストロボ撮影は禁止されていると注意を受けたり、17日のシンポジウムの前には、これは後で訂正されましたが、上映するヴィデオの内容をチェックすると言われたりはしましたが。展覧会全体については、読売アンデパンダンみたいで、たいして新鮮味を感じなかったという意見も出ています。
今回の検閲問題についての意見はまちまちです。あまりキュレーターを責めるべきではないという意見から、検閲、規制の事実がありながら「表現の可能性が広がった」とする柏木氏は非難されてしかるべきではないのかというものまで。9月1日に開いた集会以降FIU全体としての動きはありませんが、有志で公開質問状を出す予定です。
ポリティカル・コレクトネスについて、政治的正義なんていうのは胡散臭いので、違う言葉を使ったほうがいいだろうということ、日本での「言葉狩り」についての意見交換。若槻さん追悼のシナリオの出版について新井君から報告があり、ミーティングの席でもカンパが集まりました。
以上(守谷)

▼会計報告
「オン・キャンプ/オフ・ベース」展、9月1日に開いた検閲問題についての集会の清算はまだできていません。会場費、コピー代などで普段よりも支出が増えたため、前回までの繰り越し分を加えても10,843円の赤字になってしまいましたが、近いうちに「オン・キャンプ/オフ・ベース」展の報酬の一部がFIUの収入に繰り込まれる予定です。
収入
前回繰り越し 4,247 円
参加費 8,000 円
計 12,247 円
支出
会場費 6,000 円
切手代 8,730 円
封筒代 600 円
コピー代 7,760 円
計 23,090 円

△アトピック・サイト展その後
前回のガゼットで知らせましたようにたように、「インパクション」と「美術手帖」に記事が出ました。「インパクション」では、「アトピック・サイト」展での検閲の実際に詳しく、美術批評としても優れた小倉利丸氏の「いかなる政治性も排除せよ」(このタイトルは、電通プロジェクト開発局長から東京都の要望として柏木博氏に出された手紙の一節から取られている)、柏木博氏の「アトピック・サイト展について」、沖縄プロジェクトへの差別と検閲について大榎君の「沖縄封じのアトピック・サイト展」、シェリー・ローズ氏の作品に関連した北原恵氏の「検閲されたペニス」の4本。「美術手帖」の方は、岡崎乾二郎氏の「真の『パブリック・アート』はいかにして可能か」と、編集部による「緊急レポート」、新川貴詩氏による「『沖縄プロジェクト』の真相」の3本。「インパクション」は置いてある書店が少ないのですが、ぜひ取り寄せて読んでください。また、11月30日には、富山県立近代美術館での大浦作品問題にも取り組んでいる「間の会」の主催で討論集会が行われるようです。関心のある方は、守谷までお問い合わせください。

▲「ヨーゼフ・ボイス没後10年-新しい芸術の解釈をめぐって」
11月19日(火)から21日(木)まで三田の慶應義塾大学アートセンターで開かれる、ヨーゼフ・ボイスのヴィデオ上映会のチラシを同封する予定でいましたが、慶應義塾大学アートセンターに問い合わせたところ、枚数を刷っていないそうなので、チラシの同封は止めにします。問い合わせ、参加申し込みは直接、慶應義塾大学アートセンター(Tel.:03-3453-0250 )へ。

☆次回ミーティングのお知らせ
次回のミーティングでは、以前からプランとしてある「社会彫刻家」展(仮題)について考えていきたいと思います。このプランについては、5月のガゼットで次のように書きました。「社会の中で、それを社会彫刻と呼びはしなくても、すぐれた仕事をしている人たちがいます。そうした人たちの活動を取り上げた展覧会を企画する。たとえば、坂本弁護士の、あるいは、これはFIUの活動の最初の頃にあった案ですが、福岡正信の活動など」。つまり「社会彫刻」を発見し、単に理念としてではなくひとつの、あるいは多数の活動として提示していきたいと考えているわけですが、具体化のためには、さらにいろいろな意見、アイディアを持ちよってもらって話し合っていくことが必要だろうと思います。
関心のある方は、ぜひご参加ください。また、来年1月に募集が締め切られる芸術文化振興基金へ応募することも考えています。「社会彫刻家」展にこだわらず、アイディアを募ります。
日時:11月10日(日)午後6時30分~9時30分
会場:神宮前区民会館(渋谷区神宮前6-10-14 Tel.03-3409-4565)
参加費:1,000 円程度
問い合わせ:Tel./Fax. 03-3395-6175 守谷


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